(書評) ゆるゆり ノベルアンソロジー



某所でエロエロだって言ってたので、買ってきました。
以下、ネタバレ含むレビュー。

「ゆるい夏の日」

作家:森田季節

本誌でも掲載されている、百合姫所縁の作家さんです。
一読して真っ先に抱いた感想に、落胆の意味を込めて「ああ、ラノベだなぁ」と。ほとんど会話劇です。あと、あかりちゃん、不愍な子。

京子と結衣、或いは綾乃との掛け合いが書いてて楽しかったんだろうと思うんですが、読み物にするにはちょっと諄いですね。
結衣と綾乃の二人で語らうところは、それっぽくて良かったのですが。

評価:★★

ゆるっと生徒会

作家:瑞智士記

全編が生徒会メンバーを中心に構成されています。
買う前にエロエロ担当だと聞いていましたが、まさかここまでとは。

3本目まで読んで非常に好感触でしたが、4本目は京子の夢オチをいいことに、ひたすら多作品のパロディでボケ倒す展開になってしまったのは残念です。後書きを鵜呑みにするならば、森田季節さんの影響を受けて書き上げたのがこれなのかな?

評価:★★★

たまにはマンガみたいな -千歳 Ver.-(京子×綾乃、櫻子×向日葵)

ちょっとした衝撃によって、千歳の妄想癖の対象が「櫻子×向日葵」へとシフトしてしまったIF展開。

この二人のいちゃいちゃ妄想に加えて、千歳を正気に戻そうと試みたのが、綾乃への直截的なスキンシップ。
もとい、キス。

——あ、綾乃って……こんなにも可愛かったんだ……。それに……なんていうか……とってもエロい……。

この話、エロティックな描写にやたらと気合いが入ってます。
京子、本気モードに入ってます。
綾乃ちゃんは恍惚とし過ぎです。

眠れぬ夜のトライアングル

作家:菅沼誠也

あかりと京子、結衣とちなつ、(番外的に)櫻子と向日葵。それぞれが過ごした夜のひとときをコンセプトにした三篇。
前二人よりも硬派で、とても読みやすかったです。

評価:★★★★

「近くにあった月」(あかり、京子)

四人でお泊まり会をしている途中、深夜に目が醒めてしまい眠れずに困るあかり。たまたま起きた京子が付き添って、コンビニへと行くお話。

あかりをネタキャラとして扱わず、しかも京子と絡ませる幻の「京あか」を公式アンソロで書き上げるとは、吃驚しました。完成度も高く、「京あか」派が増えることも有り得るでしょう。あかりと京子の関係性をいじり役・いじられ役の枠から先輩・後輩に嵌め込む捉え方を忘れかけていた自分が情けなく思います。

「鬼のいぬ間に……」(ちなつ、結衣)

同じ時間軸の裏側のエピソードとして、取り残されたちなつと結衣のお話。

ちなつちゃんがやや暴走気味で、最後に就寝前のキスを求めてますが、寸止め終わるのがまたもどかしい。本気になったちなつちゃんはおそらくこんな感じなんでしょうね。後輩を出来るだけ傷つけたくないが、美少女を目の前にしてどうすればいいのか、ひたすら葛藤する結衣。気苦労が絶えないでしょうに。

「ホラーと深夜の幼馴染」(向日葵、櫻子)

原作6巻に収録されている結衣とちなつの映画館エピソードから膨らませて、ホラー映画を観たあとのお話。

自然な展開で、さくひまはラブラブして、言うこと無しです。

総評

過去にあった出来事にあげられる事項はアニメ化されているものが多いので、アニメだけ見ててもスムーズに読んでいけます。

「千歳の妄想」という前置きが無ければ百合描写が描けないものなんでしょうかね。悪く言えばワンパターンで、窮屈でした(ただ、妄想の内容に関してはグッジョブとしか言いようがありません)。菅沼誠也さんはごく自然なテイストだったので、良かったです。

漫画のアンソロジーを読んだ時も思ったのですが、綾乃の地名ギャグは作者・なもり先生のセンスがあってこそなのか、各執筆者が産み出したオリジナルギャグはどれもこれもつまら……不似合いに思えて、違和感だらけです。この点、瑞智士記さんは既存のギャグを引用するに留めているので、高評価です(菅沼誠也さんの作品では綾乃は未登場)。

三つ纏めて評価を下してしまったら、良いところが悪いところを均して凡としてしまうので、なかなか難しいです。
ここまで書いてきて、森田季節さんをあまり評価していないのが分かると思うのですが、主観の問題なので重く受け止めずに参考にしてください。
僕個人の意見として、二次創作の範疇にメタネタ、パロネタは不要だと思っていますし、何よりラノベ独特の文体はすっかり苦手となってしまったので、その辺りが大きな評価ポイントとなりました。

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